仮定されるサポートライン
チャートは幕末期からの米ドル円長期波動。
サポートライン(赤の実線)を仮定できることから長期トレンド(おそらく200年以上のスパン)は円安ドル高を想定する。
ただしこの50年ほど(つまり変動相場制移行後)は円高が進んだあと保ち合いで推移。
これらは360円までの上昇トレンドに対する調整、カウンタートレンドの波といえる。
ドル円の超長期のパターンは未知の存在のため、ひとまずは360円までの上昇をトレンド方向の波[A]と定義するのが現時点での最善ではないだろうか。
この場合でも波[A]の始点をどこに置くかという問題が残るが、新規パターンは急変動を以て始まると考えれば1945年(4.267)が妥当ではないかと思う。
さもなければ1930年(2.01)が候補となるだろう。
波[B]は調整波動の特性として複雑化、長期化する傾向があるので、この先まだ数十年続いてもおかしくはない。
だとすれば将来どこかの時点で、冒頭に述べたサポートラインがテストされる場面も起こり得るかもしれない。
1970年以降の推移
1995年の79.78までは明確な下落トレンドだがインパルス(1-2-3-4-5)構造ではない。
実態は7波動の調整波構造(a-b-c-d-e-f-g)であって、これはダイアメトリックフォーメーションと呼ばれるパターンに該当する。
79.78までの下落に対しては1998年の147.62までの3年あまりの反発が際立っている。
38.2%水準に近い40.8%のリトレースメントである。
調整波パターン完了後の61.8%未満のリトレースメントはx波(small x)なので、これによって全体(1970年以降)の構造が複合調整になることがわかる。
1970年から1995年の下落は複合調整の第1フェーズという位置付けになる。
x波は先行パターン(この場合第1フェーズ)以上の時間を消費しない。
よって2022年現在ではx波が1998年で終了していることはほぼ確実であって、147.62以降を二つめの調整波パターン(第2フェーズ)と位置づけることになる。
実際147.62から2000年の101.36までは値幅こそさほど大きくはないものの鋭角的な下落であって、新規パターンが開始されたこと、つまり波[a]であることを裏付ける挙動といえる。
(新規パターン、新規トレンドのスタートは急激な変動によって確認される。)
以後の軌跡は複雑だが、内部波動に第1フェーズとの相似が出現していることはありがたい手がかりだ。
2002年から2012年までの構造は、d波がトライアングルであることまで含めて第1フェーズ(1970~1995年)のダイアメトリックフォーメーションをそっくり真似た作りとなっていることがおわかりだろうか。
この期間は小さなダイアメトリックによって波[c]を形成していることになる。
その結果、2012年以降は波[d]と推定される。
2012年以降はd波
直近2022年3月下旬では122円台にのせており、到達するかどうかは別にして2015年の125円、さらに2002年の135円が徐々に視野に入ってきている。
波[d]は波[b]に比較して価格・時間・複雑度のすべてにおいて増大している。
波[c]もまた波[a]と比べたときに同様の傾向を示していた。
こうした特徴からは、1998年の147.62以降のパターンはニュートラルトライアングルもしくは拡大トライアングルの可能性が高いのではないかと思う。
ケース1:ニュートラルトライアングル
ニュートラルトライアングルはトレンド波「a・c・e」のうち、c波が最長となるトライアングルだ。
よってa波とe波の規模は近似する傾向がある。
(これは第3波延長タイプのインパルスにおける第1波と第5波の関係と同様のロジックである。)
現在まだ波[d]が確定していないのでおおざっぱな推定になるが、波[e]の値幅は波[a]に近い規模だとすると40円幅前後になるのではないか。
価格水準的には1ドル80円台から90円台といったあたりになるだろう。
上記のロジックから波[e]は波[c]を超えた大きさにはならないので、2011年の75円水準には到らないと見られる。
波[e]は今後数年のうちに生じる動きであり、それによって1998年から進行している第2フェーズも第1フェーズの時間量(約25年)に近い規模になると見込まれる。
しかし1970年以降の複合調整が、第1フェーズ(1970~1995年)と第2フェーズ(1998年~)を以て完了するかという疑問が残る。
それは幕末からの長期波動において仮定されるサポートラインにはまだあまりにも遠すぎるからだ。
複合調整は第3フェーズまで展開することができる。
よって第2フェーズ完了後の反発規模が限定的な場合(その反発はx波になるだろう)、相場が第3フェーズに移行する可能性がある。
第3フェーズが生じれば第1・第2に比類する規模が想定されることになる。
価格水準も円高ドル安方向に一段階シフトするものと見られるが、現時点でこれ以上論ずるのは時期尚早である。
ケース2:拡大トライアングル
1998年以降が拡大トライアングルであれば、波[d]の完成後、波[e]は長期間の下落(ドル安)トレンドを形成すると想定される。
波[c]と波[d](まだ完成したとは言えないが)がそれぞれ10年規模だが、波[e]はこれらよりもさらに長期間になる公算が大きい。
波[e]の時間の最長限度は波[b]+[c]+[d]で求められるので、現時点においても最長で20年以上となる可能性が存在している。
また、価格面で拡大トライアングルのe波はa波またはc波の101~161.8%になるケースが多い。
よって波[d]の高値水準にもよるが、波[e]の下落幅は80円前後の規模になることも考えられる。
今日明日の話ではなく15~20年先と断わったうえで、「1ドル50円」という水準も拡大トライアングルの構造からは否定できないことを指摘しておく。